今回の話題は、素晴らしいアイディアで特許になっているものの実例です。皆さんの参考にしていただい
て、関連の特許も作ってみてはいかがでしょうか。


このアイディの基本は「遅延回路はメモリである」という考え方に基づくものです。

衛星通信は地上と衛星の間でアップリンク(地上局から衛星へ信号を送信する通信)とダウンリンク(衛星から 地上局への通信)からなりますが、この一往復では0.25秒の遅延があります。この間はこの宇宙空間に信号 が伝播しているというわけです。夢のある話ですね。地上でしたら、NTTの光ファイバーや同軸ケーブルを介し て例えば、東京から大阪に信号が伝播しているわけですが、この場合信号の伝播に関しての遅延はほとんど ありません。(ちなみに、弊社は衛星関係のビジネスも一部行っております。。。宣伝、宣伝。。。)

衛星の場合には、37000Kmの宇宙空間の静止衛星にめがけて通信しますので遅延(37000/30万キロ/秒 =0.12秒)があるわけです。この遅延は、一般的には衛星通信の欠点と位置付けられております。わたしは、 このことを逆用するのに思い当たりました。「遅延はメモリである」ということです。

すなわち、アップリンク・ダウンリンクで一往復してきた衛星回線の信号を再び、アップリンクにつなげるようにす ると衛星回線を使って信号が巡回することになるわけです。たとえてみれば、「お手玉」方式です。昔、良く、母 が4個あるいは5個のお手玉の芸(お手玉を知らない人もいるかも?その類の人にはジャグラーの芸と同じ物と 理解してください)を私に見せてくれました。これが原理です。

たとえば、通信回線と速度が毎秒200MBぐらいのものであるとすると、このメモリは200MB*0.25で50MB のメモリと成るのです。

多分、こんなアイディアに気づいた人はいないと思います。これは特許だ!
素晴らしい・・・と思いました。


さて、次のステップが大切ですよね。アイディアだけでは特許にならない。(第2回、3回の講座の主題でした)どのように実用に供するかそして、それをいかに工業化する(技術的解決)手段として提言するかが特許ということになるからです。

技術的な解決は比較的簡単にわかりました。ダウンリンクで戻ってきた信号をいかにアップリンクにつなげるかということですが、ここには簡単に例えばシフトレジスターでシリアル信号を渡せばできることは、この道の専門家であれば容易にわかります。すなわち、工業化は容易です。

しかし、どのような実用的効果があるのかということが課題になりました。

そこで、このアイディアをどのように実用に供するのかという観点から考えを進めました。衛星は、放送である。地上局へ一斉同時放送が可能ということですので、このメモリは地上局が共通に使えるメモリであるといえます。そこで、共通に使える宇宙に浮かんだメモリ環境というように考えをすすめました。そのうち、みんなが使えるメモリの領域を分割する案が浮かんできたのです。たとえば、上の50MBのメモリ空間を時間的に時分割して利用することが考えられます。(とりあえず、この考え方を特許にしました)

この特許は立派に特許になっております。(卓越したアイディアだとおもっております。また、また、自慢話かな??)


さて、これで特許となってはいたのですが。。。問題はやはりありました。。。何でしょうか?

それは、如何にビジネスに結びつくかです。(だから、だれか、この特許を買ってくれないかなぁとずっと思っておりますが(苦笑))

実は、衛星通信は今でこそブロードバンドがPCの普及による動画の通信、携帯通信、デジタルテレビなどの普及しておりますが、当時は、まだまだの時代でした。ですから、特許にするのをあきらめてしまったのです。でも、今にして思えば、特許にしておけば、特許収入は結構なものになっていたでしょう。



さて、この講座の本質にさらに迫る話題となります。特許は書いたがビジネスになるかということです。 この課題に関しての答えは本当に難しいことです。将来のニーズを先取りしてリスクを覚悟で判断する ということになるわけですから。(もっとも、特許を維持する費用は会社が負担している場合が多いので すが、個人が特許を持つと成るとこの維持費は深刻な問題になってきます)

特許として書いても、ビジネスには程遠い。しかし、特許にしておかなければ特許の権利行使はできな いのは当然です。ここに、特許の難しさがあるのではないでしょうか。

次回の話題は、ビジネスに結びつく特許のお話をします。


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